2026年6月10日
軽度認知障害(MCI)の段階で相談するという選択
親の物忘れが気になりはじめた方へ。軽度認知障害(MCI)の段階で相談する意味、家族が気づく変化、薬を試せる可能性について、認知症診療経験のある医師が解説します。西東京市・保谷・大泉学園周辺で物忘れ外来をお探しの方へ。
最近、親の物忘れが増えてきた。
同じことを何度も聞く。
約束を忘れることが増えた。
財布や鍵を探す時間が増えた。
買い物で同じものを何度も買ってくる。
本人は「年齢のせい」と言うけれど、家族から見ると少し心配。
親の物忘れが気になりはじめたとき、家族は迷います。
「年齢相応なのか」
「認知症の始まりなのか」
「まだ様子を見てよいのか」
「一度、物忘れ外来で相談した方がよいのか」
すぐに認知症と決めつける必要はありません。
ただし、単なる年齢のせいとして、長いあいだ様子を見続けることがよいとも限りません。
認知症には、いきなり生活全体が大きく崩れるように始まるものだけではなく、その前段階として、軽度認知障害、いわゆるMCIと呼ばれる時期があります。
MCIは、認知症そのものではありません。
一方で、まったく問題のない状態とも言い切れません。
「まだ生活はできているけれど、以前とは少し違う」
この段階で一度状態を確認しておくことには、大きな意味があります。
家族が先に気づくことがあります
軽度認知障害の段階では、ご本人が強く困っているとは限りません。
買い物に行ける。
近所も歩ける。
会話も一見ふつうにできる。
身の回りのことも、ある程度できている。
そのため、ご本人は、
「年のせい」
「誰でもあること」
「病院に行くほどではない」
と受け止めていることがあります。
一方で、家族から見ると、以前とは少し違う変化が見えることがあります。
同じ質問が増えた。
予定の確認が何度も必要になった。
薬の飲み忘れが出てきた。
通帳や財布の管理が不安になってきた。
料理や片付けの段取りに時間がかかるようになった。
人の名前や日付が出にくくなった。
こうした変化は、ご本人だけでは気づきにくいことがあります。
だからこそ、物忘れ外来では、ご本人の話だけでなく、家族が気づいている変化も大切な情報になります。
家族として、受診を勧めるタイミングに迷うことがあります
親の物忘れが気になっても、すぐに受診につなげるのは簡単ではありません。
「本人に言うと怒るかもしれない」
「年のせいと言われると、それ以上言いにくい」
「まだ一人で生活できているから大丈夫かもしれない」
「でも、前とは少し違う気がする」
家族の方が先に変化に気づいていても、ご本人はあまり困っていないことがあります。
「大丈夫」
「そんなことはない」
「病院に行くほどではない」
そう言われると、それ以上強く勧めにくいものです。
一方で、通帳や保険証を何度も探している。
同じ話を何度もしている。
薬を飲み忘れている。
予定を忘れることが増えている。
その様子を見ると、やはり心配になる。
強く受診を勧めるほどではない。
けれども、このまま様子を見るだけでよいのか分からない。
その段階で、家族だけで判断しようとしなくてよいと思います。
物忘れを責める前に、まず状態を確かめる。
それが、早い段階で相談する意味です。
MCIは「まだ大丈夫」と言い切れない段階です
軽度認知障害、MCIは、認知症と診断されるほどではないものの、年齢相応の物忘れだけとも言い切れない状態として考えられます。
この段階では、日常生活が大きく崩れていないこともあります。
一人で歩ける。
買い物に行ける。
会話ができる。
身の回りのことも、ある程度できる。
けれども、以前と比べると、明らかに物忘れが増えている。
同じ話が増えた。
予定を忘れることが増えた。
薬の管理が少し心配になってきた。
料理や買い物の段取りに時間がかかるようになった。
以前より外出に不安が出てきた。
このような変化がある場合、生活が大きく崩れる前に、状態を確認しておくことが大切です。
認知症がかなり進んでから相談するのではなく、物忘れが気になりはじめた段階で相談する。
それが、物忘れ外来の大切な役割です。
「まだ歩いて来られる段階」で相談する意味
認知症の相談というと、すでに生活が大きく崩れてから受診するものだと思われることがあります。
しかし、物忘れ外来で大切なのは、かなり進行してから初めて相談することだけではありません。
まだ自分で歩いて来られる。
家族と一緒に外来まで来られる。
診察室で会話ができる。
日常生活はおおむね保たれている。
しかし、物忘れや段取りの悪さが少しずつ気になってきた。
そのような段階で相談することにも意味があります。
物忘れ外来は、認知症が進んでから行く場所だけではありません。
まだ歩いて来られる段階で、これからを考える場所です。
「まだ大丈夫」と思っているうちに、相談できる段階があります。
物忘れ外来で相談しやすい段階
物忘れ外来は、主に、物忘れが気になりはじめた段階、MCIが疑われる段階、軽度認知症が疑われる段階の方を想定しています。
まだ歩いて来院できる。
診察室で会話ができる。
日常生活が完全には崩れていない。
家族の方と一緒に状況を整理できる。
このような段階で、現在の物忘れがどのような状態なのかを確認し、必要に応じて今後の検査や治療方針を検討します。
一方で、当院は、強い興奮、暴言、暴力、徘徊、介護拒否、幻覚、妄想、昼夜逆転など、進行した認知症に伴う行動・心理症状への対応を中心とする外来ではありません。
進行した認知症で、介護困難やBPSDへの対応が中心となる場合には、より専門的な体制、入院設備、地域支援との連携が必要になることがあります。
当院は、進行した認知症のBPSD対応を主目的とする外来ではありません。
その前の段階である、物忘れ、MCI、軽度認知症が疑われる時期に、状態を確認する外来としてご利用いただくことを想定しています。
MCIの段階で、薬を試せる可能性を相談したい方へ
近年、認知症の治療は少しずつ変化しています。
以前は、認知症と診断された後に、症状の進行や生活上の困りごとに合わせて治療を考えることが中心でした。
現在は、アルツハイマー病による軽度認知障害や軽度認知症の段階で、治療薬の対象となる場合があります。
そのため、「まだ認知症と決まったわけではないから様子を見る」だけではなく、早い段階で状態を確認する意味が以前より大きくなっています。
もちろん、すべての物忘れに薬が使えるわけではありません。
また、薬を使えば認知症が完全に治る、という単純な話でもありません。
物忘れの原因が何か。
MCIと考えてよい状態なのか。
アルツハイマー病による変化が疑われるのか。
通院の負担を含めて、ご本人に合う選択肢なのか。
こうした点を整理したうえで、現実的に治療方針を考えていく必要があります。
物忘れ外来で最初に大切なのは、薬の名前を決めることではありません。
年齢相応なのか。
MCIが疑われるのか。
軽度認知症の段階なのか。
それとも、不眠、うつ、不安、薬の影響が関係しているのか。
まず、その整理から始まります。
「認知症になる前に、何かできることがあるなら知りたい」
「MCIの段階で試せる薬があるのか相談したい」
「親の物忘れが、年齢相応なのか、受診したほうがよい段階なのか知りたい」
そのような方は、早めに外来で状態を確認する意味があります。
物忘れの背景には、認知症以外の要因が隠れていることもあります
物忘れがあるからといって、すぐに認知症と決まるわけではありません。
うつ状態。
不眠。
不安。
強いストレス。
薬の影響。
身体疾患。
生活環境の変化。
こうした要因によって、集中力や記憶力が落ち、物忘れのように見えることもあります。
たとえば、
眠れていない。
ぼんやりしている。
会話の反応が遅い。
意欲が落ちている。
外出が減った。
以前より元気がない。
このような状態が重なると、認知機能の低下と見分けがつきにくいことがあります。
だからこそ、早い段階で、物忘れの原因や背景を確認することが大切です。
こんな変化があれば、一度相談を考えてもよい段階です
次のような変化がある場合は、物忘れ外来で状態を整理することを考えてもよいかもしれません。
同じことを何度も聞くようになった。
約束や予定を忘れることが増えた。
財布、鍵、通帳などを探すことが多くなった。
薬の飲み忘れが増えた。
料理や家事の段取りが以前より苦手になった。
会話の中で言葉や名前が出にくくなった。
買い物で同じものを何度も買ってくる。
本人は困っていないと言うが、家族から見ると心配な変化がある。
こうした変化があるからといって、すぐに認知症と決まるわけではありません。
ただ、年齢のせいだけと決めつけて、長く様子を見続けるのではなく、一度状態を確認しておくことには意味があります。
物忘れが気になりはじめた段階で
当院は完全予約制です。
ご記入いただいたWEB問診をもとに、医師が内容を確認し、当院でお力になれると判断した場合に、WEB予約をご案内します。
小規模クリニックのため、診療体制上すべてのご相談に対応できるわけではありません。
あらかじめご了承ください。
保谷駅前こころのクリニック
