2026年3月26日
春は、卒業の季節です。
学校を卒業する。
職場を離れる。
住む場所が変わる。
ひとつの関係が終わり、新しい毎日が始まる。
そうした節目のとき、こころは思っている以上に揺れます。
前に進むことは、うれしいことのはずなのに、
どこかさみしい。
少し不安になる。
本当にこれでよかったのだろうか、と立ち止まりたくなる。
そんな気持ちになることは、決してめずらしいことではありません。
そしてそれは、心療内科の通院が終わるときにも、少し似ています。
治療がおわるとき、少し心細くなることがあります
眠れるようになってきた。
朝のしんどさがやわらいできた。
不安が前ほど強くなくなった。
仕事や学校に、少しずつ戻れるようになってきた。
そうして状態が整ってくると、通院は少しずつ区切りに向かいます。
それは、本来、とてもよいことです。
しんどかった時期を抜けて、日常が戻ってきたということだからです。
けれど実際には、治療が終わりに近づいたときに、少し不安になる方もいます。
「もう通わなくて大丈夫と言われると、少しさみしい」
「何かあったとき、また崩れないか不安になる」
「ここで話していた時間がなくなると思うと、少し心細い」
そのように感じるのは、とても自然なことです。
通院は、
つらかった時期に、自分の状態を整理し、少しずつ立て直していく時間でもあります。
だからこそ、それが終わるとき、こころが少し揺れることがあります。
よくなったのに不安、ということがあります
「元気になってきたのなら、不安はなくなるはず」
そのように思われるかもしれません。
けれど、こころの回復は、一直線ではありません。
よくなってきたからこそ、
支えが少し離れていくことに戸惑う。
これからは自分でやっていけるだろうかと不安になる。
また調子を崩したらどうしよう、と考える。
そうした気持ちは、矛盾ではありません。
卒業も同じです。
次へ進むことは前向きなことですが、今までいた場所を離れることでもあります。
うれしさと不安が一緒にあるのは、むしろ自然な反応です。
治療がおわるときも、
「もう大丈夫」に近づいたからこそ、少し揺れることがあります。
通院がおわることは、切れてしまうことではありません
治療が終わると聞くと、
もう頼ってはいけないように感じる方もいます。
けれど、本来の治療の区切りは、急に何かがなくなることではありません。
眠り方が少し整ってきた。
無理をしすぎたときに気づけるようになった。
つらくなったときの休み方がわかってきた。
不安があっても、以前ほど飲み込まれずに過ごせるようになった。
そうした小さな力が、日常の中に少しずつ戻ってきた。
その積み重ねの先に、通院の区切りがあります。
つまり、治療がおわるというのは、
支えがなくなることではなく、
支えが少しずつ自分の中にも育ってきた、ということです。
卒業のあとに揺れるのは、悪化とは限りません
通院が終わったあとや、終わりに近づいたころに、少し不安定になることがあります。
新しい環境が始まる。
生活リズムが変わる。
「しっかりしなければ」と力が入りすぎる。
少し眠れないだけで、また元に戻るのではと怖くなる。
そうした揺れは、変化の時期には珍しくありません。
大切なのは、その揺れをすぐに「悪くなった」と決めつけすぎないことです。
少し疲れているのかもしれない。
少し緊張しているのかもしれない。
少し心ががんばりすぎているのかもしれない。
そうやって、今の自分の状態をやさしく見てあげることも大切です。
治療がおわっても、また相談してよいのです
一度通院が終わると、
「もう受診してはいけない気がする」
「また来るのは大げさかもしれない」
と感じる方もいます。
ですが、そうではありません。
こころの不調は、忙しさや季節の変化、環境の変化で、また揺れることがあります。
そういうときに、早めに相談することには意味があります。
大きく崩れてからではなく、
少し眠れない。
少し不安が増えてきた。
少し無理が続いている。
その段階を通院で整えることができると、日常は保ちやすくなります。
治療の卒業とは、もう二度と頼らないことではありません。
必要なときに、また相談できるという安心を持ちながら、自分の生活に戻っていくことでもあります。
ひとつの区切りは、終わりではなく、次の始まりです
通院がおわること。
薬が減ること。
受診の間隔があくこと。
診察室で話していた時間が、少しずつ日常の中に戻っていくこと。
それは、つらかった時間が少し遠くなり、自分の暮らしを自分の足元に取り戻してきた、ということでもあります。
もちろん、こころはときどき揺れます。
新しい季節の前では、誰でも少し不安になります。
けれど、以前とは違って、
今は少しだけ、自分を整える方法を知っている。
無理をしすぎたときのサインに気づける。
必要なときには助けを求めてよいと知っている。
そのことは、きっとこれからの毎日の中で、静かに力になってくれます。
さいごに
卒業するとき。
何かが終わるとき。
治療がひと区切りになるとき。
こころが少し揺れるのは、自然なことです。
うれしさもある。
さみしさもある。
不安もある。
そのどれも、あってよいものだと思います。
こころは、前に進むときにも、少し立ち止まりながら進んでいくものです。
もし今、卒業や環境の変化、通院の区切りの中で少し心細さを感じている方がいたら、
どうか、そんな自分を責めすぎないでください。
治療がおわることは、置いていかれることではありません。
ここまで来られた、というひとつの証でもあります。
必要なときは、またWEB問診を利用下さい。
