2026年3月02日
保谷駅へ向かう途中から不安や動悸が出る、西武池袋線での通勤を考えると翌朝が怖い方へ。駅に着く前から身体が反応する理由、予期不安と職場ストレスの関係、心療内科へ相談する目安を解説します。
朝、自宅にいる間は、それほどつらくない。
着替えもできた。朝食も少し食べた。今日も仕事には行けそうだと思っていた。
ところが、保谷駅へ向かって歩き始めると、胸のあたりが落ち着かなくなります。
駅が見えてくる。池袋方面へ向かう人の流れが増える。ホームへ入ってくる電車の音が聞こえる。
そのころには心拍が速くなり、息も浅くなっています。
「今日は乗れるだろうか」
「改札を通ったあと、また苦しくなるのではないか」
まだ電車には乗っていません。それなのに、身体の方は、すでに何かが起きたように反応しています。
改札の手前で立ち止まる。スマートフォンを見るふりをして、呼吸が落ち着くのを待つ。一本見送れば乗れるような気もする。けれど、電車がホームへ入る音を聞くと、また胸がざわつく。
引き返したい。
一瞬、そう思います。
それでも会社へ連絡する理由が思いつかず、改札を通る。こうして毎朝、仕事を始める前にかなりの力を使ってしまう方がいます。
駅に着く前から苦しくなる
診察室で、このような話になることがあります。
「電車の中で苦しくなるなら、まだわかるんです。でも私は、駅に着く前から動悸がします」
「初めて動悸がしたのも、通勤中でしたか」
「はい。少し前に、急行の中で息が苦しくなって、途中で降りました」
一度でも通勤中に強い動悸や息苦しさを経験すると、そのときの場所や状況が記憶に残ります。
保谷駅へ向かう道。改札へ続く階段。朝の人混み。電車のブレーキ音。
以前は何ともなかったものが、「あのときと同じことが起きるかもしれない」という合図に変わっていきます。
本人は仕事へ行こうとしているだけです。頭では、今日も大丈夫かもしれないと考えている。
しかし、身体は前に苦しくなった朝を覚えています。
私は診察で、「まだ起きていない発作に、身体が先に備えてしまっているようですね」と説明することがあります。
すると、
「そうなんです。何も起きていないのに、ずっと構えている感じです」
と返ってくることがあります。
胸の音を確かめる朝
最初の動悸には、その日の条件が重なっていたのかもしれません。
前の晩にあまり眠れなかった。朝食を取らなかった。駅まで急いで歩いた。仕事が忙しく、少し緊張していた。コーヒーを続けて飲んでいた。
その日だけの反応だった可能性もあります。
ところが、翌朝から胸の様子が気になります。
駅へ歩きながら、心臓が速くなっていないかを確認する。息をきちんと吸えているか確かめる。少しでも胸が強く鳴ると、「今日も始まった」と思う。
そう思った瞬間、心拍がさらに速くなります。
不安になったから動悸が出るだけではありません。少し心拍が上がったことに気づき、それを危険だと思ったために、不安が強くなることもあります。
胸の音を確かめるほど、その音が大きく聞こえてしまう朝があります。
通勤の工夫が、いつの間にか増えていく
最初は、急行をやめて各駅停車に変えます。
次に、すぐ降りられそうな車両を選ぶ。混雑している電車を一本見送る。途中駅で降りて、少し休んでから次の電車に乗る。
どれも、その日の通勤を続けるための工夫です。それで会社へ行けているなら、工夫自体をすべて悪いものと考える必要はありません。
ただ、診察で話を聞いていると、条件が少しずつ増えている方がいます。
「各駅停車なら乗れます」
「ドアの近くでないと不安です」
「いつもの車両に乗れないと、一本見送ります」
「最近は、電車の遅延が怖くて、さらに30分早く家を出ています」
まだ出勤はできています。
しかし、通勤のために必要な準備が増え、使える電車や時間が狭くなっています。本人も、いつからここまで大変になったのか、はっきり覚えていないことがあります。
休日には乗れるのに、平日の朝だけつらい
休日に同じ保谷駅から電車へ乗っても、特に問題はない。ところが、平日の池袋方面への通勤になると動悸がする。
そのような違いがある場合、電車だけを見ても十分ではありません。
電車の先には職場があります。
上司との関係が悪くなっている。業務量が増えた。失敗できない仕事を抱えている。会社に着くと、席に座った瞬間から緊張が続く。
「仕事を辞めたいわけではありません」
そう話す方も少なくありません。
仕事は続けたい。責任もある。職場へ行けば、何とか働ける。それでも、そこへ向かう身体が毎朝抵抗している。
診察では、保谷駅で何が起きているかだけでなく、池袋方面へ向かうその先に、何が待っているのかも聞きます。
駅は、症状が現れる場所ではあっても、負担の始まりとは限らないからです。
朝の動悸を、最初から不安と決めない
動悸や息苦しさは、不安やパニック反応だけで起きるものではありません。
不整脈、甲状腺機能亢進、貧血、低血糖、喘息などでも、似た症状が出ます。カフェイン、飲酒、脱水、服用中の薬が関係している場合もあります。
これまで経験したことのない強い胸痛、失神、冷汗を伴う症状、運動中にも出る動悸などがあれば、「通勤のストレスだろう」と自分で決めず、まず内科で確認してください。
内科で調べても大きな異常がない。それでも平日の通勤前、決まった場所で動悸や息苦しさを繰り返す。
その場合には、不安やパニック反応の可能性も考えます。
検査で異常が見つからなかったからといって、本人が感じている症状まで存在しないことにはなりません。
「会社には行けているので」と話す方へ
「毎日、出勤はできています。だから、受診するほどではないと思っていました」
診察室で、よく聞く言葉です。
たしかに、会社へは行けている。欠勤もしていない。周囲にも大きな変化は気づかれていない。
ただ、そのために前日の夜から翌朝の電車を心配し、以前より1時間早く起き、各駅停車しか選べず、途中下車を繰り返しているなら、毎朝かなり無理をしています。
完全に電車へ乗れなくなるまで待つ必要はありません。
翌朝のことを考えて眠れない。駅へ着く前に何度も引き返したくなる。会社に着いた時点で疲れ切っている。休日の外出まで避けるようになった。
そのあたりが、一度相談してよい目安になります。
通勤できなくなってから治療を始めるのではなく、今の通勤を失わないために治療を考える。
そのことをまだ会社へ行けている方にこそ、知っておいてほしいと思います。
診察では何を考えるのか
いつから症状が始まったのか。駅へ向かう途中、改札、ホーム、乗車後のどこで強くなるのか。休日の電車ではどうなのか。睡眠や職場の負担はどうか。
まずは、そこを確認します。
「動悸がする」という一言だけでは、必要な対応は決まりません。
発作のように突然強くなるのか。朝から小さな不安が続き、駅で頂点になるのか。電車が怖いのか、それとも職場へ向かうことがつらいのか。
経過を分けて考えたうえで、発作時の対応や予期不安への対処、必要に応じた薬物療法を検討します。
薬を使う場合にも、薬の性質、依存性の有無、服用する時刻、通勤中や仕事中の眠気などを考えます。すべての方に同じ治療を行うわけではありません。
目標は、ただ不安を感じなくすることではありません。
駅へ向かうたびに胸の音を確認する朝から、必要以上に自分の身体を監視せず、仕事へ向かえる朝へ戻していくことです。
保谷駅へ向かう途中から不安になる方へ
当院は完全予約制です。
ご記入いただいたWEB問診を医師が確認し、当院でお力になれると判断した場合に、WEB予約をご案内します。WEB問診への記入だけで予約が確定するわけではありません。
小規模クリニックで予約枠が限られているため、症状の内容や安全性、診療体制などから、すべてのご相談をお引き受けできるわけではありません。
保谷駅前こころのクリニックは、保谷駅北口の階段を降りた目の前、いなげや保谷駅前店2階にあります。
まだ西武池袋線で通勤できている。ただ、保谷駅へ向かう途中から毎朝不安になり、動悸や息苦しさが出る。
そのような方は、どの場所から症状が始まるのか、休日にも同じことが起きるのか、睡眠や仕事にどの程度影響しているのかをWEB問診からお知らせください。
保谷駅前こころのクリニック
