2025年12月01日
ソファでくつろぎながら、
いつものようにイヌをモフモフしていたら──
指先に、「なにか」が触れる。
その瞬間、頭をよぎる言葉は、たいていひとつです。
「え、これ…腫瘍?」
もちろん、本当に腫瘍のこともあります。
けれど、動物病院の現場では、実際にはいろいろな「正体」があります。
① 実はただの「毛玉です」
長毛の子や、換毛期の子に多いのがこれです。
毛がからまって小さな塊になっていると、
指で触ったときにコリッとします。
皮膚そのものが盛り上がっているのか、
毛のかたまりなのか、
一度、毛をかき分けてみてください。
毛をほぐしたら消えてしまうなら、
それはただの毛玉です。
② ただの「乳首です」
意外と多いのが、乳首を腫瘍と勘違いするケースです。
オスにもメスにも、乳首は左右に並んでいます。
「片側だけにあるコリコリ」を見つけたと思ったら、
反対側にも同じ位置に“お揃い”であったりします。
左右対称に同じような出っ張りが並んでいるなら、
それは乳首の可能性が高いです。
③ 小さな塊は「ダニです」
皮膚にぴったりくっついた、
小さな豆粒みたいな丸いふくらみ。
よく見ると、足のようなものがついていたり、
色がグレー〜茶色だったりします。
これがダニ(マダニなど)のこともあります。
ダニは感染症のリスクもあるため、
むりやり引きちぎるのはNGです。
疑わしいときは、動物病院で
安全に取ってもらうのが安心です。
④ 子犬でよく見る「へそヘルニアです」
お腹の真ん中あたり、
本来“おへそ”にあたる位置が、
ぷくっとふくらんでいることがあります。
これが臍ヘルニアです。
脂肪だけが出ている軽いタイプから、
まれに腸などが出てしまう重いタイプまであります。
見つけた時点で慌てる必要はありませんが、
去勢・避妊手術と一緒に整復することも多いので、
一度は獣医師に相談しておくと安心です。
⑤ オス犬で気づく「潜在睾丸です」
「おまたのあたりに丸いコリコリを見つけた」
そんなとき、潜在睾丸(停留睾丸)の場合もあります。
本来、精巣は左右2つが陰嚢内に下りてくるはずですが、
片方だけお腹側や鼠径部に残っている子がいます。
触ると、丸いビー玉のようなふくらみです。
潜在睾丸は、将来、腫瘍化のリスクが高くなるため、
原則として去勢手術を検討するべき状態です。
早めに動物病院で相談しましょう。
⑥ 本当に「乳腺腫瘍」のこともある
そして、見逃したくないのが乳腺腫瘍です。
乳腺に沿って、
小さな米粒のようなものから、
ころんとしたしこりまで、
硬さや大きさはいろいろですが、早めの受診がとても大切になります。
乳腺腫瘍には、良性のものも悪性のものもあり、
「触っただけでは判断できない」ことがほとんどです。
レントゲンやエコー、場合によっては細胞診などで、
全体のリスクを見ながら方針を決めていきます。
ちなみに、当院の院長は、獣医師として勤務していた頃、
雄犬の乳癌を診断・手術したことがあります。
「オスだから大丈夫」とは限らず、
どんな子でも油断はできないのだと感じさせられる症例でした。
「腫瘍かどうか」を、ひとりで抱え込まないで
大事なのは、「これは腫瘍かもしれない」と飼い主さん一人で答えを出そうとしないことです。
見た目が似ていても、中身はまったく別物です。
「なんとなく気になるコリコリ」を見つけたら、
かかりつけの動物病院で相談してみてください。
モフモフする時間は、
スキンシップであり、健康チェックの時間でもあります。
もし指先に小さな違和感を見つけても、
「見つけられた自分、えらい」
と思って、一緒に答えを探しに行きましょう。
HSMC
