精神科医の頭の中(4)|睡眠アプリで毎日自分の睡眠を見える化した人はどうなる?――「眠れていない」を見直す睡眠認知行動療法|保谷駅前こころのクリニック|西東京市「保谷駅」北口すぐの心療内科

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精神科医の頭の中(4)|睡眠アプリで毎日自分の睡眠を見える化した人はどうなる?――「眠れていない」を見直す睡眠認知行動療法

精神科医の頭の中(4)|睡眠アプリで毎日自分の睡眠を見える化した人はどうなる?――「眠れていない」を見直す睡眠認知行動療法|保谷駅前こころのクリニック|西東京市「保谷駅」北口すぐの心療内科

2026年8月15日

睡眠アプリで毎日記録するとどうなる?「眠れていない」を見直す睡眠認知行動療法|保谷

睡眠アプリでは6時間、本人の感覚では2時間。「眠れていない」という確信は、本当に一晩の睡眠そのものを表しているのでしょうか。睡眠の見える化から、自分の睡眠への認知を見直す睡眠認知行動療法について、診察室の一場面から解説します。

診察室で、

「昨日は、一睡もできませんでした」

と言われることがあります。

ところが、話を一つずつ聞いていくと、その「一睡もしていない」という現実が、少しずつ揺らいでくることがあります。

「夜中に目が覚めたのは何時頃でしたか」

「2時くらいです」

「その次に時計を見たのは?」

「4時半です」

「2時から4時半まで、ずっと起きていた記憶はありますか」

少し考えて、

「そこは、よく分かりません」

と答えます。

さらに聞きます。

「その次は?」

「気づいたら6時前でした」

そして、患者さんがスマートフォンをこちらに向けます。

睡眠アプリには、

睡眠時間 6時間18分

と表示されています。

「でも先生、こんなに眠った感じはしません。自分では2時間くらいです」

私は、アプリが正しいとも、本人の感覚が間違っているとも言いません。

ただ、

「では、一晩中ずっと起きていた、とも断定できないかもしれませんね」

と確認します。

そこで、患者さんはもう一度画面を見ます。

過去2週間の記録を横にずらしていく。

5時間48分。

6時間11分。

5時間56分。

6時間24分。

途中で何度か目を覚ました夜もあります。

睡眠スコアが低い日もあります。

それでも、「まったく眠れていない夜」は、本人が思っていたほど多くありません。

しばらく画面を見たあと、

「私、全然眠れていないわけではないんですね」

と言われることがあります。

私が診察室で見ているのは、睡眠スコアそのものではありません。

「私は眠れていないに決まっている」という確信が、少しだけ緩む瞬間です。

私たちが「現実」だと思っているものは、事実そのものとは限らない

私たちは、自分が見たもの、自分が感じたものを、そのまま現実だと思いがちです。

しかし、自分が現実だと思い込んでいる事柄は、相対的であり、必ずしも真実そのものとは限りません。

睡眠は、そのずれが起こりやすい時間です。

理由は単純です。

眠っている間の自分を、自分では観察できないからです。

午前2時17分に時計を見た。

午前4時42分にも目が覚めた。

朝方、カーテンの外が明るくなってきたのも覚えている。

起きていた時間は、記憶に残ります。

一方で、その間に眠っていた時間は、眠っていた以上、記憶には残りません。

朝になると、覚えている「起きていた場面」だけをつなぎ合わせて、

「私は一晩中眠れなかった」

という一つの現実が出来上がることがあります。

しかし、その現実は、一晩のすべてでしょうか。

睡眠アプリも絶対的な真実ではない

もちろん、睡眠アプリに表示された数字を、そのまま医学的な正解として扱うわけではありません。

一般的な睡眠アプリやスマートウォッチは、脳波を直接測定して睡眠を診断しているものではありません。

身体の動きや心拍数などから、睡眠と覚醒を推定しています。

そのため、

「アプリが6時間と表示したから、必ず6時間眠っていた」

とは言えません。

ただし同じように、

「自分では2時間しか眠っていないと感じたから、実際にも2時間だった」

とも限りません。

ここで大切なのは、どちらを正解にするかではありません。

自分が確信していた睡眠の姿とは、別の可能性もある。

そのことに気づく材料として、睡眠アプリが役立つ場合があります。

睡眠アプリは判決文ではありません。
自分が下した判決に、異議を申し立てる証人になることがあります。

睡眠は夜に起こる。でも「悪い睡眠」という判決は朝に下される

夜中に目が覚めた。

これは事実です。

しかし、

「夜中に目が覚めたから、昨夜の睡眠は失敗だった」

というのは、事実そのものではありません。

事実に対する評価です。

さらに、

「こんな睡眠では今日は何もできない」

「このままでは体を壊す」

「今夜もまた眠れない」

という考えが重なる。

すると、睡眠そのものよりも、睡眠に対して自分が下した評価の方が苦しさを大きくしていくことがあります。

診察では、この二つを分けて考えます。

昨夜に起きた事実

午前2時に目が覚めた。

午前4時半にも時計を見た。

午前6時半に起きた。

翌日は少し眠かったが、仕事には行けた。

朝、自分が下した判定

「一晩中眠れなかった」

「昨夜の睡眠は完全に失敗だった」

「今日は何もできない」

この二つは、同じではありません。

私たちが苦しんでいるのは、夜に起きた出来事だけではなく、朝、自分が下した判決であることがあります。

「7時間・途中覚醒ゼロ・朝から爽快」でなければ不合格

睡眠に悩んでいる方に、

「何時間眠れれば、眠れたことになりますか」

と聞くことがあります。

すると、

「最低7時間です」

「途中で一度も起きないことです」

「夢を見ないことです」

「朝からすっきり動けることです」

と答える人がいます。

希望として持つこと自体は問題ありません。

ただ、それを合格条件にすると話が変わります。

6時間59分なら不合格。

途中で一度起きたら不合格。

朝に少し眠気が残ったら不合格。

この採点表では、かなり眠れていても合格できません。

睡眠が5時間から6時間に増えれば、今度は、

「深い睡眠が少ない」

ことが気になる。

途中覚醒が減れば、

「夢を見たから眠りが浅い」

ことが気になる。

朝の眠気が軽くなれば、

「起きた瞬間から爽快ではなかった」

ことが気になる。

採点表が変わらなければ、睡眠が改善しても、不合格の理由だけが引っ越していきます。

睡眠認知行動療法は「気にしすぎ」と言う治療ではない

睡眠認知行動療法では、

「気にしすぎです」

「もっと前向きに考えましょう」

と伝えるだけではありません。

本人が睡眠について、どのようなルールを使っているのか。

そのルールが、実際に起きていることと合っているのか。

そこを一つずつ確認します。

例えば、

これまでのルール

「途中で一度でも目が覚めたら、その夜の睡眠は失敗」

実際に起きたこと

途中で目は覚めた。

しかし、その前後にも眠っていた可能性がある。

翌日は多少眠かったが、仕事はできた。

同じような夜でも、日中を問題なく過ごせたことがある。

新しいルール

「途中で目が覚めても、それまでに眠った時間が消えるわけではない。再び眠れていて、日中に大きな支障がなければ、一晩全体を失敗とは判定しない」

夜に起こったことは変わっていません。

変わったのは、それを判定するルールです。

「最悪の夜だった」

という結論が、

「途中で起きたけれど、ある程度は眠れていた」

に変わります。

これは、無理に楽観的になることではありません。

事実と、自分が事実に付け加えた意味を、一度分けてみる作業です。

自分で毎朝不合格にしながら、外に「合格する睡眠」を求めていないか

不眠治療では、少し難しいねじれが起きることがあります。

自分の睡眠を、毎朝、自分で不合格にしている。

その一方で、

「もっと良い睡眠にしてください」

「もっと効く薬はありませんか」

「朝まで一度も起きないようにしてください」

と、薬や医療に答えを求める。

もちろん、医療に助けを求めることが悪いわけではありません。

治療が必要な不眠症もあります。

薬物療法が必要な場合もあります。

しかし、

「7時間以上」

「途中覚醒ゼロ」

「起きた瞬間から爽快」

という採点表を固定したままでは、睡眠が改善しても合格できません。

薬を変える。

生活を整える。

睡眠時間が少し増える。

それでも、次の不合格理由が見つかります。

本人は、自分がその採点表を使っていることに気づいていないことがあります。

だから診察では、

「何時間なら合格なのか」

「途中で目が覚めることを、どのくらい重大なことだと思っているのか」

「眠れなかったと思った翌日に、何をやめてしまうのか」

まで確認します。

受診するときには、睡眠アプリの画面や薬だけでなく、睡眠を採点している自分の物差しも、診察室に持ってきてください。

「自分の睡眠も、捨てたものではない」と思えた日

睡眠アプリを使い始めても、睡眠そのものは急には変わらないかもしれません。

途中で目が覚める日はある。

6時間に届かない日もある。

朝、少しだるい日もある。

それでも、何日か記録が並ぶと、

「毎晩、本当に一睡もできていなかったわけではない」

「途中で起きても、そのあとまた眠っている日もある」

「5時間、6時間の日でも、普通に仕事をしていた」

ということに気づく人がいます。

すると、

「今日も眠れなかった」

という朝の言葉が、

「完璧ではないけれど、思っていたより眠れていた」

に変わる。

そして診察室で、

「自分の睡眠も、捨てたものではないのかもしれません」

という言葉が出てくることがあります。

睡眠時間が急に2時間増えたわけではありません。

途中覚醒がなくなったわけでもありません。

でも、寝床に入るときの緊張が少し減る。

夜中に起きても、その瞬間に一晩を不合格にしなくなる。

朝、睡眠アプリを見ても、点数だけで一日の体調を決めなくなる。

眠りは変わっていない。
変わったのは、眠りを見る目でした。

睡眠の治療は、眠りを増やすことだけではありません。

すでに存在している眠りを、眠りとして受け取れるようにすることでもあります。

良い睡眠を手に入れられないのではなく、
すでにある睡眠に、合格を出せなくなっているのかもしれません。

「問題ないと思うこと」と「睡眠障害を放置すること」は違う

もちろん、

「睡眠は認知の問題だから、すべて気にしなくてよい」

という話ではありません。

不眠が続き、仕事や日常生活に明らかな支障が出ている。

日中に強い眠気がある。

大きないびきや睡眠中の呼吸停止を指摘されている。

脚のむずむず感で眠れない。

強い不安や気分の落ち込みを伴っている。

睡眠薬を増やさなければ眠れないと感じている。

このような場合には、睡眠アプリの数字だけで判断せず、医学的な評価が必要になることがあります。

大切なのは、

「睡眠そのものに問題があるのか」

「睡眠への不安や厳しい自己評価が、苦しさを大きくしているのか」

「その両方なのか」

を整理することです。

「問題がないと思い込む」ことも、

「重大な睡眠障害に違いないと思い込む」ことも、

どちらも現実そのものとは限りません。

睡眠アプリでは眠れているのに、「眠った気がしない」方へ

保谷駅前こころのクリニックでは、睡眠アプリの数字だけを見て、

「眠れている」

「眠れていない」

と判断することはありません。

睡眠時間や途中覚醒だけではなく、就床時刻、起床時刻、昼寝、服薬状況、日中の眠気、仕事や生活への影響を確認します。

さらに、

「何時間なら安心できるのか」

「途中で目が覚めたとき、どのような結論を出しているのか」

「眠れなかったと思った翌日に、予定を取りやめていないか」

「眠ろうとするあまり、必要以上に長く寝床に入っていないか」

といった、睡眠に対する考え方や行動も整理します。

そのうえで、必要に応じて睡眠習慣の調整、薬物療法、睡眠認知行動療法などを検討します。

睡眠アプリや睡眠日誌を使っている方は、診察時の参考になります。

きれいに資料を作り直す必要はありません。

普段見ている画面のままで構いません。

初診をご希望の方は、まずWEB問診に、現在の睡眠状況、日中の困りごと、服用している薬などをご記入ください。

内容を確認し、当院で対応可能と判断した方へWEB予約方法をご案内します。

当院ですべての睡眠症状に対応できるわけではありません。睡眠時無呼吸症候群など、専門的な睡眠検査が必要と考えられる場合には、睡眠専門医療機関への相談をおすすめします。

保谷駅北口から通院しやすく、大泉学園、ひばりヶ丘、石神井公園、西東京市、練馬区方面からも受診しやすい立地です。日曜・祝日、平日夜間も診療しています。

私たちが「現実」だと思っているものは、いつも事実そのものとは限りません。

睡眠も同じです。

「私は眠れていない」という確信の中に、夜に起きた事実と、自分が加えた評価が混ざっていないか。

眠りを変える前に、眠りを見ている自分の目を、一度確かめてみる。

それも、不眠治療の一つです。

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