2025年12月18日
高齢になって腎臓が悪くなり、動物病院に通って点滴をする日が増えた猫さん。
そのたびに、あなたの心の中に、こんな思いがよぎっているのかもしれません。
「この子の寿命は、もうすぐなのかな」
「点滴を続ける意味って、あるのかな」
「この子は、つらくないのかな」
どれも、猫さんを大切に思うからこその、とても自然な感情です。
そして同時に、こういう迷いは、じわじわとこころを疲れさせます。
猫の慢性腎臓病(CKD)は、高齢の猫さんに多い病気です。腎臓は静かに働き続ける臓器なので、かなり進むまで症状が目立ちにくいことがあります。
そのため、ある時期から「昨日まで食べていたのに、急に食べなくなった」という変化が起こることもあります。
動物病院での点滴や皮下補液は、腎臓の機能が落ちて水分を保ちにくくなった猫さんの、脱水・だるさ・食欲低下などを和らげるための大切な治療です。
腎臓そのものを元通りにするのは難しくても、「つらさを減らして、穏やかな日を増やす」ことは十分に目指せます。
点滴は、そのための杖みたいな存在です。
「終末期かも」と感じるときに出やすいサイン
寿命を正確に予測することは誰にもできません。
ただ、終末期に近づくにつれて、次のようなサインが目立ってくることがあります。
• 食べない日が続く
• 吐き気・嘔吐が増える
• 体重が落ちる、筋肉がやせる
• ぼんやりして反応が薄い
• 口内炎・口臭が強くなる
• 尿が極端に少ない、出ない、または逆に多い
• ふらつき、けいれんなどの神経症状
とくに、「食べられるか」「吐き気を抑えられるか」は、猫さんのしんどさに直結します。
そして、ここが揺れると、飼い主さんのこころも大きく揺れます。「私の判断で苦しませていないかな」と感じやすいからです。
それでも、できることはまだあります
終末期に近い段階でも、ケアの選択肢は残っています。
• 吐き気・食欲不振のコントロール(制吐薬、食欲増進など)
• リン、血圧、貧血などの管理(状態に応じて)
• 補液の量・頻度の微調整
• 療法食がつらいときは「食べられるものを優先」する判断
• 痛みや不快感を減らす緩和ケア
治療が「延命だけ」にならないように、
この子が少しでもラクな時間を過ごせているかを軸に、主治医と一緒に微調整していくことが大切です。
あなたが毎日見ているものが、いちばんの指標
検査値ももちろん大切ですが、日々の暮らしぶりは、それ以上に重要なヒントになります。
• 食べられた量
• 水を飲めているか
• トイレに行く様子
• 眠り方、起きたときの表情
• 触れたときの反応
• その子らしさが残っているか
メモしておくと、「今の治療が合っているか」を判断する材料になります。
同時に、あなたのこころの中にある不安も、少しだけ言葉にできます。
迷っていること自体が、愛情です
「寿命がもうすぐかも」と思うとき、人は、してあげられることがもう残っていない気になりがちです。
でも、あなたがそばにいて、体調の波を一緒に受け止め、つらさを減らすために通院を続けていること。
それ自体が、猫さんにとっては安心になると思います。
これから先、治療のゴールが
「長く生きること」から「苦しくないこと、穏やかであること」へ、少しずつ重心を移っていく時期が来るかもしれません。
そのときも、あなたは独りで決めなくていい。
信頼する獣医さんとなら一緒に、うちの子にとってのいちばん優しい道を探していけると思います。
もし、その過程であなたのこころが擦り切れそうになったら――
そのときは、あなたのこころのケアもまた、相談していいのです。
保谷駅前こころのクリニック
