2026年7月27日
仕事は終えられる。
メールも返した。
必要な会話もした。
今日やるべきことも、何とか片づけた。
ところが家に着くと、
夕食を作る気になれない。
お風呂に入るのがひどく面倒に感じる。
洗濯物を取り込んだまま放置してしまう。
着替えることさえ後回しになる。
ソファに座ったつもりが、そのまま一時間。
スマートフォンだけは見られるのに、立ち上がって何かを始めることができない。
そんな夜が続いていないでしょうか。
「会社では働けているのだから、単に面倒くさがっているだけだ」
そう考える方は少なくありません。
しかし診察では、私は少し違うところを見ています。
仕事を終えられたことと、生活を回す力が残っていることは、同じではありません。
帰宅後に残っている「次の行動を決める力」
夕食には、意外に多くの判断があります。
何を食べるか。
作るのか、買うのか。
冷蔵庫には何があるのか。
食べ終わったら片づけるのか。
入浴にも、
服を脱ぐ。
お湯を出す。
髪を洗う。
乾かす。
着替える。
という小さな行動が連続しています。
元気なときは、ほとんど意識しません。
ところが疲労や緊張が蓄積すると、一つひとつの行動が妙に重くなることがあります。
私はこうした状態を、単純に「体力がない」とは考えません。
職場で使い切っているのは、体力だけではなく、
次に何をするかを決め、実際に動き始める力
であることがあるからです。
だから、
スマートフォンは見られる。
動画も見られる。
けれど、夕食は作れない。
ということが起こります。
矛盾ではありません。
画面を眺め続けることと、自分で次の行動を決めて身体を動かすことでは、必要な負荷が違います。
「何もしていないのに、時間だけ過ぎる夜」
20時に帰宅する。
少し休もうと思って座る。
気づくと21時。
「そろそろお風呂に入らないと」と思う。
でも動けない。
22時。
明日のことを考え始める。
23時。
結局、お風呂も食事も中途半端なまま寝る時間が遅くなる。
翌朝は疲れた状態で目を覚ます。
そしてまた仕事へ行く。
この流れが続くと、
仕事で疲れる
→ 帰宅後の生活が遅れる
→ 就寝が遅れる
→ 回復しきれない
→ 翌日の余力がさらに少なくなる
という循環ができてきます。
本人には、
「最近だらしなくなった」
と見えるかもしれません。
診察する側から見ると、私はむしろ、
生活の後半までエネルギーが届かなくなってきた
と考えます。
洗濯物の山は、診察室ではただの洗濯物ではありません
精神科では、「気分は落ち込んでいますか」と聞くだけでは状態が分からないことがあります。
私は生活の変化を見ます。
以前なら帰宅してすぐ着替えていた人が、仕事着のまま横になるようになった。
毎日入浴していた人が、一日おきになった。
料理していた人が、コンビニだけになった。
洗濯物を畳めなくなった。
LINEを返すことさえ後回しになった。
好きだったドラマを「見る気力がない」と感じるようになった。
一つだけなら珍しいことではありません。
しかし、それまで普通にできていた複数のことが、同じ時期からできなくなっているなら意味が変わります。
生活は、こころの余力をかなり正直に映します。
会社の評価表には出ない不調が、洗濯物の山には出ていることがあります。
「お風呂に入れない」は大切な情報です
診察で、
「最近、お風呂はどうですか」
と聞くことがあります。
精神科と関係がないように見える質問ですが、以前普通にできていた入浴が急に負担になったのであれば、その変化には意味があります。
食事。
入浴。
着替え。
片づけ。
人との連絡。
買い物。
こうした生活行動が少しずつ重くなっているとき、仕事だけを見て「まだ大丈夫」と判断すると、現在の負荷を小さく見積もってしまうことがあります。
大切なのは、一日を最後まで見ることです。
午前9時から午後6時まで働けたかだけではありません。
起床してから眠るまで、生活がどこまで保てているか。
私はそこを見ます。
必ずしも「すぐ休職」という話ではありません
帰宅してお風呂に入れない日があるから、すぐ休職すべきという話ではありません。
忙しい日もあります。
暑い日もあります。
睡眠不足の日もあります。
数日で戻るなら、休息で回復することもあります。
見るべきなのは、
以前との変化
と
その状態が続いているか
です。
以前より明らかにできなくなった。
それが何週間も続いている。
眠っても戻らない。
朝にも疲れが残る。
不安や動悸が出てきた。
仕事中の集中にも影響し始めた。
このような場合には、まだ出勤できている段階でも一度状態を整理する意味があります。
心療内科は、仕事を休むためだけに受診する場所ではありません。
仕事を続けるために、今どこから崩れ始めているのかを見ることも診療です。
今夜も「やらなければ」と思いながら動けなかった方へ
人は余裕が少なくなってくると、大きなことより先に、小さなことができなくなる場合があります。
歯を磨く。
服を畳む。
夕食を考える。
お湯を出す。
返信する。
それまで考えずにできていたことに、一つずつ「面倒」という重さが乗ってきます。
仕事が終わってから始まる生活まで含めて、一日です。
職場では普通に働けているのに、生活を回す力が以前より明らかに残らなくなっているなら、その変化をWEB問診にそのまま書いてください。
「夕食を作れない」
「お風呂に入れない」
「帰ると横になったまま動けない」
それも、状態を判断するための大切な情報です。
当院では、初診前にWEB問診をご入力いただき、症状、睡眠、仕事や生活への影響、治療歴、診断書相談の有無などを確認しています。
当院は完全予約制です。ご記入いただいたWEB問診をもとに、医師が内容を確認し、当院でお力になれると判断した場合に、WEB予約をご案内します。そのため、WEB問診を書けば、必ず予約できるという仕組みではありません。
予約枠が限られているという制約の中で、診療体制上、すべてのご相談をお引き受けできるわけではありませんが、
今夜も、動けなかった方、その状況をそのままWEB問診にお書きください。
当院でお力になれるか検討させて頂きます。
保谷駅前こころのクリニック
