私たちは同じ世界を見ていない|唯識とメタ認知から考える不安・動悸・予期不安|保谷駅前こころのクリニック|西東京市「保谷駅」北口すぐの心療内科

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私たちは同じ世界を見ていない|唯識とメタ認知から考える不安・動悸・予期不安

私たちは同じ世界を見ていない|唯識とメタ認知から考える不安・動悸・予期不安|保谷駅前こころのクリニック|西東京市「保谷駅」北口すぐの心療内科

2026年8月25日

「少し話があります」

上司から、そんなメッセージが届いたとします。

ある人は、

「何の話だろう」

と思うだけかもしれません。

ところが、以前仕事で強く叱責された経験のある人なら、

「また怒られるのではないか」
「何か失敗したのだろうか」
「評価を下げられるかもしれない」

と、一瞬のうちにその先まで考えてしまうことがあります。

まだ上司とは話していません。

何を言われるのかも分かりません。

それなのに心臓が速くなり、胸がざわざわして、仕事が手につかなくなる。

この時点で実際に起きたことは、

「少し話があります」

というメッセージが届いたことだけです。

では、私たちは何に反応しているのでしょうか。

同じ場所にいても、見えている世界は同じではない

同じ電車に乗っていても、

ある人にとっては、ただの移動手段です。

一方、以前その電車の中で強い動悸を経験した人にとっては、

「また苦しくなるかもしれない場所」

になることがあります。

同じ夜でも、

ある人にとっては一日が終わって休める時間です。

しかし、不眠が続いた人にとっては、

「今夜も眠れなかったらどうしよう」

と緊張が始まる時間になることがあります。

外側にある電車も、夜も、職場も同じです。

しかし、そこで本人が経験している世界は同じではありません。

なぜなら私たちは、目の前の出来事だけを見ているわけではないからです。

過去の経験。

記憶。

失敗したこと。

怖かったこと。

人から言われたこと。

そして、

「次もきっとこうなる」

という未来の予測。

それらを重ねながら、今の世界を見ています。

同じ世界に生きていても、私たちは同じ世界を見ているわけではありません。

唯識という「心と世界」の考え方

仏教哲学には「唯識」という考え方があります。

唯識を単純に、

「外の世界など存在しない」

という意味で理解する必要はありません。

今回注目したいのは、

「私たちが経験している世界は、認識する心と無関係には成り立たない」

という視点です。

過去の経験が残り、それによって現在の世界の見え方が形づくられ、現在の経験がまた次の認識へ影響していく。

唯識では、こうした心と経験のつながりが古くから考えられてきました。

もちろん、唯識は仏教哲学であり、現代の精神医学や心理学そのものではありません。

しかし、不安や予期不安について考えるとき、この視点には興味深いところがあります。

過去の出来事が、まだ起きていない未来をつくる

以前、電車の中で強い動悸が起きた。

その出来事自体は、もう終わっています。

ところが次に電車へ乗ろうとすると、

「また動悸が起こるかもしれない」

という考えが浮かぶ。

すると、まだ何も起きていないのに、

心拍数が上がる。

呼吸が浅くなる。

胸が苦しくなる。

そして、

「やっぱり始まった」

と思う。

そこでさらに、

「やはり電車は危険なんだ」

という認識が強くなる。

過去の経験から未来を予測し、

その予測によって現在の身体が反応し、

その身体反応を見て、

「自分の予測は正しかった」

と確信する。

こうして不安が強くなっていくことがあります。

不安は、未来を見通しているわけではありません。

過去の経験を材料にして、まだ起きていない未来を先に描いていることがあります。

「また起こる」と「また起こると思っている」は違う

ここで大切なのが、

事実と予測を分けることです。

「また動悸が起こる」

と、

「私は今、また動悸が起こると思っている」

は、よく似ています。

しかし、この二つは同じではありません。

「また動悸が起こる」

という言葉の中では、

頭の中に浮かんだ予測が、そのまま未来の事実になっています。

一方、

「私は、また動悸が起こると思っている」

と捉えると、

自分の心の中に生じた一つの考えとして見ることができます。

ここで関係してくるのが、メタ認知です。

メタ認知とは、自分の考えを一歩離れて見ること

私たちは普段、自分の考えていることの中に入り込んで生活しています。

「失敗する」

「嫌われた」

「また発作が起きる」

「今夜も眠れない」

そう思った瞬間、それが世界そのもののように感じられることがあります。

しかし、

「私は、失敗すると思っている」

「私は、嫌われたと解釈している」

「私は、また発作が起きると予測している」

「私は、今夜も眠れないかもしれないと心配している」

と見ることもできます。

自分の思考を、自分の思考として眺める。

自分の認識を、もう一段上から観察する。

これがメタ認知の一つの考え方です。

不安を無理に消す必要はありません。

「そんなことを考えてはいけない」と抑え込む必要もありません。

ただ、

「これは今起きている事実なのか」

「それとも、私はそうなると予測しているのか」

と区別してみる。

それだけでも、不安と自分との間に少し距離が生まれることがあります。

私たちは「事実」だけを見て生きているわけではない

ここまで考えると、一つのことが見えてきます。

私たちが現実だと思っているものの中には、

外で実際に起きている出来事だけでなく、

過去の経験から生まれた意味づけや未来予測も含まれています。

これは、

「すべては気の持ちようだ」

という話ではありません。

上司も、仕事も、電車も実際に存在します。

人間関係の問題も、身体症状も現実です。

変えることのできない出来事もあります。

しかし、

外で起きた出来事と、

その出来事について自分の心の中につくられた世界とは、

完全には同じではありません。

自分がつくった世界なら、変えられるのか

ここで、もう一つ問いが生まれます。

もし私たちが過去の経験を通して「自分が経験する世界」をつくっているのだとしたら、

その世界の見え方は変えられるのでしょうか。

何でも自分の思い通りに変えられる、という意味ではありません。

過去に起きた出来事は変えられません。

他人の性格も、会社の環境も、自分だけの力では変えられないことがあります。

しかし、

過去の経験からつくられた「これからの世界の見え方」には、変化する余地があります。

たとえば、

「電車に乗れば必ず苦しくなる」

と思っていた人が、

実際には乗ることができた。

少し動悸はしたけれど、それ以上にはならなかった。

次も乗ることができた。

そうした新しい経験が積み重なることで、

「電車=必ず危険」

だった世界が、

「不安になることはある。でも乗れることもある」

という世界へ変わることがあります。

世界そのものを作り替えているわけではありません。

自分が世界を見るときに使っている「心の中の地図」が更新されていく、と考える方が近いでしょう。

世界を都合よく見るのではなく、より正確に見る

認知を変えるというと、

「前向きに考える」

「ポジティブに考える」

という意味だと思われることがあります。

しかし、それとは少し違います。

大切なのは、

自分が事実だと思っているものの中に、

どこまでが実際に起きていることで、

どこからが記憶で、

どこからが解釈で、

どこからが未来予測なのか。

それを分けて見ていくことです。

世界を都合よく見るのではありません。

むしろ、自分の予測を少し横に置いて、世界をもう一度見直してみる。

その作業に近いかもしれません。

「そうなる」と「そうなる気がする」の間には距離がある

不安が強いと、

「そうなる気がする」

という感覚が、

「そうなる」

という確信へ近づいていきます。

また動悸が起こる気がする。

失敗する気がする。

眠れない気がする。

嫌われた気がする。

その感覚自体は、本物です。

本人にとっては、とても現実的です。

しかし、

強く感じることと、それが事実であることは同じではありません。

そんなとき、

「これは今、本当に起きていることだろうか」

「私は今、何を予測しているのだろう」

「その予測には、過去のどんな経験が影響しているのだろう」

と考えてみる。

それだけでも、自分が見ている世界を少し違う角度から眺められることがあります。

同じ世界に生きていても、私たちは同じ世界を見ているわけではありません。

そして、過去の経験によって現在の世界の見え方がつくられているのであれば、

新しい経験によって、その見え方が更新される余地もあります。

過去は書き換えられません。

けれども、

過去が決めていた未来まで、そのままである必要はありません。

動悸、息苦しさ、予期不安、「また起こるのではないか」という不安が繰り返し、生活の範囲が狭くなっている場合には、パニック症などの不安症が背景にあることがあります。

また、動悸には不整脈、甲状腺機能異常、貧血など身体的な原因が関係する場合もあります。すべてを心の問題と決めつけず、必要に応じて身体面を確認することも大切です。

当院は完全予約制です。

限られた予約枠の中で、全ての方に予約を案内することはできませんが、ご記入いただいたWEB問診をもとに内容を確認し、当院でお力になれると判断した場合にWEB予約をご案内します。

「まだ起きていないことを考えて、今が苦しくなっている」

そんな状態が続いている方は、まず現在起きていることをWEB問診にご記入ください。

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