2026年6月07日
猫の慢性腎不全とは
猫と暮らしている方にとって、「慢性腎不全」や「慢性腎臓病」という言葉は、どこかで耳にしたことがあるかもしれません。
特に高齢の猫では、腎臓の機能が少しずつ低下していくことがあります。
水をよく飲むようになった。
尿の量が増えた。
食欲が落ちてきた。
体重が少しずつ減ってきた。
なんとなく元気がない。
こうした変化が、あとから振り返ると腎臓病のサインだった、ということがあります。
猫は体調不良を隠しやすい動物です。
そのため、飼い主さんが「少しおかしい」と気づいたときには、すでに腎臓の機能低下がある程度進んでいることもあります。
猫の死因として、腎臓病が語られやすい理由
猫の死因について調べていると、慢性腎不全、慢性腎臓病という言葉にたどり着く方は少なくありません。
腎臓は、体の中の老廃物や余分な水分を尿として外に出す働きをしています。
その機能が低下すると、体の中に老廃物がたまりやすくなり、食欲低下、吐き気、脱水、体重減少、だるさなどが出てくることがあります。
慢性腎臓病は、急に一日で悪くなる病気というより、時間をかけて少しずつ進んでいくことが多い病気です。
そのため、診断されたあとも、すぐに何かが終わるわけではありません。
食事療法。
内服薬。
皮下点滴。
血液検査。
尿検査。
体重の確認。
食欲の確認。
こうした管理を続けながら、その子の状態を見守っていくことになります。
猫の慢性腎不全は、猫の体に長く影響する病気であり、飼い主さんにとっても、長く向き合う病気になりやすいのです。
猫の慢性腎不全で見られることがある変化
猫の慢性腎不全では、次のような変化が見られることがあります。
水を飲む量が増える。
尿の量が増える。
食欲が落ちる。
吐くことが増える。
体重が減る。
毛づやが悪くなる。
口のにおいが気になる。
元気がなくなる。
隠れる時間が増える。
もちろん、これらの症状があるからといって、必ず慢性腎不全とは限りません。
甲状腺の病気、糖尿病、消化器の病気、歯や口の問題、腫瘍、感染症など、ほかの病気が関係していることもあります。
気になる変化がある場合は、かかりつけの動物病院で血液検査、尿検査、血圧測定などを含めて相談することが大切です。
AIM薬に期待が集まっている理由
近年、猫の慢性腎臓病に関して注目されているのが、AIMというたんぱく質です。
AIMは、体の中で不要になった細胞や老廃物の処理に関わるたんぱく質として研究されてきました。
猫では、このAIMが十分に働きにくいことが、腎臓病の発症や進行と関係している可能性が指摘されています。
この研究をもとに、猫の慢性腎臓病に対するAIM薬の開発が進められてきました。
AIM猫薬「FeliAIM」は、高齢の猫に多く見られる慢性腎臓病を対象とした動物用医薬品として、2026年4月24日に農林水産省へ製造販売承認申請が行われています。
「猫のAIM薬はいつ使えるようになるのか」と気になっている飼い主さんも多いと思います。
猫の慢性腎臓病に対して、新しい治療の選択肢が生まれる可能性があるという点で、AIM薬に大きな関心が集まっています。
私自身、獣医師として猫の診療に関わってきましたが、現在は医師・精神保健指定医として、人のこころの診療に携わっています。
猫の慢性腎不全は、猫の病気としてだけでなく、飼い主さんの心にも長く残りやすい病気だと感じています。
ただし、AIM薬だけに期待しすぎないことも大切です
AIM薬は、猫の慢性腎臓病に対する新しい可能性として注目されています。
一方で、現時点では、すでに一般の動物病院で広く処方されている薬として扱う段階ではありません。
そのため、「AIM薬があるから、猫の腎臓病はもう心配ない」と考えるのは早すぎます。
今、慢性腎臓病と診断されている猫にとって大切なのは、現在受けられる治療や管理を続けることです。
食事療法。
脱水への対応。
血圧の管理。
吐き気や食欲低下への対応。
必要に応じた点滴。
定期的な血液検査や尿検査。
こうした基本的な管理は、これから新しい薬が出てくるとしても、変わらず重要です。
AIM薬への期待と、今その子に必要な治療を続けること。
その両方を分けて考えることが大切です。
猫の腎不全は、飼い主さんの心にも残りやすい病気です
猫の慢性腎不全は、猫の体の問題であると同時に、飼い主さんの心にも深く残りやすい病気です。
毎日の投薬。
食事の工夫。
点滴。
通院。
検査値の変化。
治療を続けるかどうかの判断。
最期をどこで迎えるかという迷い。
こうした一つひとつが、あとから何度も思い出されることがあります。
「あのとき、もっと早く気づけなかったのか」
「別の治療を選んだ方がよかったのか」
「点滴を続けた方がよかったのか」
「逆に、治療を続けすぎたのではないか」
「あの子は苦しかったのではないか」
猫の腎不全では、看病の期間が長くなることがあります。
そのぶん、飼い主さんの中に、判断の記憶や後悔が残りやすい面があります。
これは、単に気持ちが弱いという話ではありません。
長く一緒に暮らしてきた存在の病気を見守り、治療の選択を重ね、最期の時間を過ごすことは、飼い主さん自身の心身にも大きな影響を与えることがあります。
獣医師であり、医師・精神保健指定医でもある立場から
保谷駅前こころのクリニックの院長は、獣医師として動物医療に関わった経験を持ち、現在は医師・精神保健指定医として、人のこころの診療に携わっています。
猫の慢性腎不全について考えるとき、そこには二つの側面があります。
一つは、猫の体に起きていることを理解する動物医療の視点です。
もう一つは、その病気と向き合う飼い主さんの心身に何が起きているのかを見る精神医療の視点です。
慢性腎不全の治療経過や看取りの記憶は、飼い主さんの中に長く残ることがあります。
「あの子のために何を選べばよかったのか」
「自分の判断は正しかったのか」
「もっとできることがあったのではないか」
そうした思いが続くと、眠れなさ、不安、気分の落ち込み、食欲低下、仕事や生活への影響として出てくることもあります。
猫の病気の経過を理解したうえで、飼い主さん自身の心身の状態を確認する必要が出てくることがあります。
猫の病気と、飼い主さん自身の心身のこと
保谷駅前こころのクリニックは、動物病院ではありません。
そのため、猫の診察、検査、投薬、治療方針の決定は行っていません。
現在治療中の猫については、かかりつけの動物病院でご相談ください。
一方で、猫の看病や看取りのあとに続く、飼い主さん自身の不眠、不安、後悔、気分の落ち込み、仕事や生活への影響については、ご本人の心身の状態として確認することがあります。
猫の慢性腎不全は、猫だけでなく、飼い主さんの記憶にも深く残りやすい病気です。
あの子の病気の経過を理解したうえで、自分自身に起きている変化を見直すことが必要になる場合もあります。
猫の慢性腎不全と、これからの治療への期待
AIM薬の研究と開発は、猫の慢性腎臓病に対する新しい可能性として注目されています。
これまで、猫の慢性腎不全と診断されると、病気の進行を見守りながら、食事療法や点滴、症状への対応を続けることが中心でした。
そこに新しい治療の可能性が加わることは、多くの飼い主さんにとって大きな意味があります。
ただし、どれほど新しい治療に期待が集まっても、今目の前にいる猫の状態を丁寧に見ることの大切さは変わりません。
水を飲む量。
尿の量。
食欲。
体重。
吐き気。
元気さ。
検査値の変化。
生活の質。
その子が今どのような状態にあるのかを、かかりつけの動物病院で確認しながら見守っていくことが大切です。
そして、万が一、あの子の病気や看取りの経験が、飼い主さん自身の不眠、不安、後悔、生活への影響として残ることもあります。
猫の病気を理解することと、飼い主さん自身の心身に起きていることを理解すること。
その両方の視点が必要になる場面があります。
あの子の病気の記憶が、ご本人の眠れなさや後悔として残ることもあります。
猫のことを知ることと、人のこころを診ること。
その両方の視点を大切にしています。
保谷駅前こころのクリニック
