2026年6月16日
気分が落ち込む。
不安が強くなる。
失敗する場面ばかりを想像してしまう。
一度考え始めると、同じことを何度も頭の中で繰り返してしまう。
あなたにそのような状態が続いているとき、背景には「認知のくせ」が関係していることがあります。
認知とは、ものごとの受け取り方、考え方、意味づけのことです。
同じ出来事が起きても、
「もうだめだ」と受け取る人もいれば、
「今回はうまくいかなかったが、次に修正できる」と受け取る人もいます。
これは性格の良し悪しではありません。
その人がこれまでの経験の中で身につけてきた、考え方のパターンです。
認知の修正とは、その考え方のパターンを少しずつ見直し、現実に合った形へ整えていく作業です。
ただし、認知の修正は、頭ではわかっていても簡単には進まないことがあります。
「会社であったことを考えすぎないようにしよう」と思っても、考えてしまう。
「気にしないようにしよう」と思っても、かえって気になってしまう。
「これからは前向きに考えよう」としても、悪い想像の方が先に出てきてしまう。
そのため、認知の修正には、いくつか大切なポイントがあります。
先ず、必要なのは、こだわりを少しゆるめることです。
ここでいうこだわりとは、自分を支えてきた考え方でもあります。
「こうあるべきだ」
「失敗してはいけない」
「人に迷惑をかけてはいけない」
「すべてきちんとしなければならない」
「相手の反応を正確に読まなければならない」
このような考え方は、これまで自分を守るために役立ってきた面もあります。
しかし、それが強くなりすぎると、こころの自由度が下がり、周囲との関係にも影響が出てくることがあります。
少しの失敗でも大きな問題のように感じたり、相手の何気ない一言に深く傷ついてしまったり、まだ起きてもいない未来の出来事に対して強い不安を感じたりすることがあります。
認知の修正は、今までの考え方を全否定することではありません。
「その考え方だけで本当に良いのか」
「別の見方はないのか」
「少しだけ緩めることはできないか」
そのように、自分の考え方に少し余白を作ることから始まります。
次に、大切なのは、成功しているイメージを持つことです。
不安やうつ状態が強いとき、人は失敗する未来ばかりを想像しやすくなります。
また怒られるのではないか。
また眠れないのではないか。
また人前で動悸が出るのではないか。
また仕事に行けなくなるのではないか。
また同じことで落ち込むのではないか。
このように、頭の中で失敗の予行演習を何度もしてしまうことがあります。
確かに、リスクを考えることは大切です。
しかし、失敗する未来ばかりを繰り返し想像していると、実際の行動もその方向に引っ張られやすくなります。
そのため、認知の修正では、「うまくいっている自分」を具体的にイメージすることも大切です。
朝、少し落ち着いて起きられている。
仕事に行く前の不安が少し軽くなっている。
相手の言葉を必要以上に悪く受け取らずに済んでいる。
眠れない日があっても、翌日を立て直せている。
完璧ではなくても、できる範囲で生活を進められている。
このようなイメージは、現実逃避ではありません。
自分が向かう方向を決めるための、こころの地図作りのようなものです。
認知の修正には、繰り返しの練習も必要です。
ここで大切なのは、「繰り返すこと」には二つの方向があるという点です。
一つは、反芻思考です。
反芻思考とは、同じ不安、後悔、怒り、自己否定を、頭の中で何度も繰り返してしまう状態です。
「あのとき、ああ言わなければよかった」
「また失敗するかもしれない」
「相手は自分を悪く思っているのではないか」
「自分はやっぱりだめなのではないか」
このような考えを何度も繰り返していると、考えている本人としては問題を解決しようとしているつもりでも、実際には不安や落ち込みが強くなってしまうことがあります。
反芻思考は、考えれば考えるほど答えに近づくというより、同じ場所をぐるぐる回り続けてしまう状態に近いものです。
一方、治療の中で大切になるのは、別の考え方や行動の仕方を繰り返し練習することです。
「今、自分はまた悪い方向に考えすぎているかもしれない」
「この考えは事実なのか、それとも不安から出てきた予測なのか」
「別の見方を一つだけ考えるとしたら、何があるか」
「今できる小さな行動は何か」
「完璧でなくても、今日できたことは何か」
このように、同じ不安を繰り返すのではなく、考え方を少し立て直す練習を繰り返していくことが大切です。
反芻思考は、心を消耗させる繰り返しです。
認知の修正は、心を立て直すための繰り返しです。
同じ「繰り返し」でも、向かう方向が違います。
長年続いてきた考え方のくせは、一度説明を聞いただけですぐに変わるわけではありません。
そのため、認知の修正は、スポーツや楽器の練習に近いところがあります。
最初はうまくできなくても、何度も繰り返すことで、少しずつ別の考え方を選べるようになります。
大切なのは、あなたのできる範囲で進めることです。
認知の修正というと、すぐに前向きにならなければいけない、自分の考え方を全部変えなければいけない、と感じる方もいます。
しかし、それはかえって負担になります。
気分が落ち込んでいるとき、不安が強いとき、不眠が続いているときに、いきなり考え方を大きく変えることは簡単ではありません。
まずは、今の自分にできる範囲で十分です。
一つだけ別の見方を考えてみる。
少しだけ行動を変えてみる。
一日の中で、できたことを一つ確認する。
不安が強いときは、考えを深追いしすぎない。
眠れない日は、翌日の立て直し方を考える。
小さな修正を積み重ねることで、少しずつこころの動き方が変わっていきます。
認知の修正は、メンタルクリニックに来院する多くの方に役立つ可能性があります。
うつ状態の方。
不安が強い方。
パニック症状がある方。
不眠が続いている方。
仕事のストレスで追い込まれている方。
人間関係で傷つきやすくなっている方。
自分を責める考えが止まらない方。
将来への不安が頭から離れない方。
症状の背景は人によって異なりますが、認知のくせを整理することは、多くの方にとって治療の助けになります。
また、メンタルクリニックでの治療は、薬の内服だけではありません。
確かに、不眠、不安、抑うつ、気分の波などが強い場合には、薬物療法が役立つことがあります。
症状が強い時期には、薬によって睡眠や不安、気分の落ち込みを整えることが、回復の土台になることもあります。
しかし、薬だけで生活のすべてが自動的に変わるわけではありません。
考え方のくせを整理すること。
不安が強くなる場面を確認すること。
反芻思考に巻き込まれすぎない方法を身につけること。
生活リズムを立て直すこと。
仕事や人間関係の負担を現実的に調整すること。
できる範囲で行動を変えていくこと。
これらも、治療の大切な一部です。
薬物療法と、認知の修正や生活の立て直しは、どちらか一方を選ぶものではありません。
必要な場合には薬の力を借りながら、同時に、自分で判断し、自分の生活を少しずつ整えていく力を取り戻していく。
そのように、現実的な方法で進めていくことが大切です。
認知の修正によって目指すのは、いつも前向きでいることではありません。
むしろ、大切なのは、自分で判断できるようになることです。
今の自分は疲れているのか。
不安が強くなっているのか。
考えが極端になっているのか。
休むべきなのか。
相談すべきなのか。
薬について相談した方がよい状態なのか。
もう少し様子を見てもよいのか。
このように、自分の状態を整理し、現実に合った判断をしやすくすることが、認知の修正の大きな目的です。
自分の未来は、変えることができます。
もちろん、一日で大きく変わるわけではありません。
すぐに不安が消えるわけでも、落ち込みがなくなるわけでもありません。
それでも、考え方のくせに気づき、少しずつ修正し、現実的な方法で練習を続けることで、これからの生活の進み方は変わっていきます。
今までと同じように考え続けるしかない。
同じことで苦しむしかない。
自分はもう変われない。
そのように感じている方でも、治療の中で少しずつ整理できることがあります。
保谷駅前こころのクリニックでは、不安、うつ、不眠、仕事のストレス、気分の落ち込みなどについて、症状や生活への影響を確認しながら、現実的な治療方針を一緒に検討しています。
必要に応じて、薬物療法だけでなく、考え方のくせや生活の立て直しについても整理していきます。
考え方を無理に変えるのではなく、今の自分にできる範囲で、これからの生活を少しずつ変えていく。
そのための相談先として、心療内科・精神科の外来を利用することも一つの方法です。
すでに通院先がある方は、現在の主治医に、認知の修正について相談してみては以下がでしょうか。
そうすることで、あなたのこころの地図を確認できるのではないかと思います。
当院で初診をご希望の方は、WEB問診で症状の経過、睡眠の状態、仕事や生活への影響、これまでの治療歴などを入力してください。
内容を確認したうえで、当院で対応可能な方にWEB予約をご案内しています。
保谷駅前こころのクリニック
